羅臼岳は知床連山の最高峰です。登山口に「ホテル地の涯」があるり、北海道の北東端でもあるので、知床の語源を、上原熊次郎の地名解の「シレトコ。島の果てと訳す」から引いて、知床はアイヌ語で「地の果て」を意味する、と書かれている文章をよく見かけます。
日本百名山にも書かれています。
実際には、シレトコと呼ばれる地名はいくつかあって、たとえば礼文島にもあります。
地の果てがそう幾つもあるはずはありません。
シレトコは「shir-etok(尽きだした土地、意訳して岬)」とするれば、礼文島など他のシレトコの地名とも良く合います。
そもそも、鮭が身をよじって遡上してくる知床の河川が、鮭漁が生活の重要な柱であったアイヌにとって、地の果てのはずがありません。
羅臼岳の登山口は斜里町側の岩尾別温泉と、羅臼側の熊の湯、それに硫黄岳からの縦走路があります。
この登山の時は、硫黄岳の縦走路の登山口があるカムイワッカの滝までの道道が世界遺産となって自然保護をするために全面一般者進入禁止となっていて、利用できませんでした。
羅臼岳に一番近い登山口が岩尾別温泉です。
今回はここを利用しました。
岩尾別温泉には無料の露天風呂がホテル地の涯の前に幾つも設けられています。トイレも駐車場に設置されています。
岩尾別温泉から入山すると、尾根の上に取り付く厳しい坂道をまず登ります。尾根の上の道はヒグマの生息場所と書かれていて、実際にここでヒグマと出合った登山者が幾人もいるそうです。わたしもここでヒグマと会った人と話をしたことがあります。
尾根を登ると羅臼平のハイマツ帯にでます。
ここから羅臼岳の岩を登って山頂に達します。
景観は抜群のはずですが、わたしが登った時はひどい強風雨で、立つことも出来ませんでした。
羅臼岳は、羅臼町から見える山の中の主座から付けられたようです。アイヌは「cha-cha-nupuri(爺ヶ岳、親爺山)」と呼んでいました。cha-cha-nupuriと呼ばれる山は国後島にもありますが、北海道では羅臼岳以外にはなさそうです。この地方に住んでいたアイヌ独特の呼び方かもしれません。
羅臼の名の由来は、「ra-ushi(腸のあるところ、意訳して鮭・獣のはらわたを裂いて埋めたところ)」ないし「ra-ush-i(低い処にある川)」の様です。地形から見て鮭や獣の臓腑を裂いて云々よりは、低い処を流れている川と見た方が自然と思います。
岩尾別は「iwau-pet(硫黄川)」です。上流にある岩尾別温泉の湯水が川に流れていることから付けられた様です。
ただ、岩尾別川にはカワガラスが住んでいるので、魚や昆虫も住めないような硫黄の流れの川ではなさそうです。
(参照「北海道の地名」)