増毛山地の主峰が暑寒別岳です。
登山道は増毛から二筋と、雨竜から一筋が設けられていますが、一番利用されているのが雨竜沼湿原を横切って南暑寒岳を越えるルートのようです。
距離の長いルートですが、勾配のきつい箇所は数カ所だけで、それを除くと平坦なだらだらした勾配の道ばかりです。
急勾配箇所は、雨竜沼ゲートパークから雨竜沼湿原への登り、南暑寒岳と暑寒別岳の鞍部が目立ちます。
途中に経過する雨竜沼湿原は、良く尾瀬湿原と比較されます。
雨竜沼湿原も尾瀬もともに山に囲まれた高所にある高層湿原です。高層湿原は標高の高いところにある湿原という意味ではなく、河川や地下水などの水の影響を受けない、高所に発達した湿地や池塘を持つ湿原という意味です。
雨竜沼湿原には無数に池塘が点在していて、湿原性の高山植物を多く見られます。通行を妨げないように、湿原の中を通る木道は行きと戻りに二本設けられていて、時計回りに歩きます。
尾瀬湿原を歩くと西すれば至仏山が見え、東すれば燧岳が見えますが、雨竜沼湿原では西に南暑寒岳と暑寒岳が見られますが、東には顕著な山は見られません。
南暑寒岳と暑寒岳の鞍部から東の低地には、池塘が散在しています。規模は小さいですが、湿原の様です。道が無いので訪れる人はいません。
暑寒別岳は、日本海に注ぐ暑寒別川の源頭にあることから、「sho-kan-pet-nupuri(暑寒別川の山)」とアイヌに呼ばれていました。暑寒別の名前の由来は、「sho-kan-pet(滝の上にある川)」と思われます。
オホーツク海に注ぐ渚滑川があるので、語源は一緒と思いましたが、渚滑川は「sho-kot(滝壺)」が語源で川を著す「pet」がありません。異なるようです。
(参照「北海道の地名」)
北海道で熊と言えばヒグマのことを指しますが、暑寒別岳の登山道や、登山口のある雨竜沼ゲートパークをテリトリーとしてしまったヒグマが登山の時にいました。このため、雨竜沼ゲートパークのキャンプ場は利用が停止されていました。
もっともここには、南暑寒荘と言うロッジがあるので、そこに泊まることが出来るので不自由は少ないでしょう。
山頂の下にも、ヒグマが草の根を掘り返した跡が幾つもありました。
増毛山地のヒグマは、道北や道央の他の地域のヒグマの生息地域と交流がないと聞いています。暑寒別岳や雨竜沼ゲートパークに出没しているヒグマは、余所から移動してきた個体ではなく、増毛山地で生まれ育った個体の可能性が高そうです。個体が僅かでも増えていると言うことは、絶滅のおそれが多少でも遠のいたと言うことで、喜ばしいのかもしれません。
(参照「ヒグマ」)