地名 | 到達時刻 | 所要時間 | |
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雲取山荘 | 05時00分 | ||
三条ダルミ | 05時45分 | 45分 | 45分 |
北天のタル | 07時51分 | 126分 | 2時間6分 |
飛龍山 | 08時34分 | 43分 | 43分 |
将監峠 | 12時09分 | 215分 | 3時間35分 |
笠取山 | 15時49分 | 220分 | 3時間40分 |
笠取小屋 | 16時26分 | 37分 | 37分 |
一日の歩行時間 |
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11時間26分 |
日付:2011/05/20 |
太陽がまだ樹木の上に出る前の薄暗い時間に出発、雲取山を西に巻く道を歩きます。気温は8℃。歩いてみたらこの道は事実上の廃道らしいことが分かりました。数カ所で道が欠落してるほか、倒木が道をふさいでいます。なんとか歩けるのは通る人が多いからでしょう。整備をしている形跡はありませんでした。朽ちた丸木橋を渡るところがあり、橋が折れたら崖下に落ちるなと、恐怖を感じました。
45分ほどで三条タルにでます。ここで今日初めて視界が開け、左手に富士山が見えました。早朝なので空気が澄んでいます。これだけくっきりとした富士山を見たのは数ヶ月ぶりでした。
三条タルから北天のタルまでピークは一つも通りません。アップダウンもきついところはなし。巻道が鬱蒼として薄暗かったのに比べて明るい雰囲気の道なので気分爽快です。足下の笹も綺麗に刈り払われています。
2000mに近い標高なのでまだ寒いらしく、樹木の葉はまだ開いていませんでした。でもよく見るとはじけそうに膨らんでいる木の芽が多く、一日でも暖かい日があればいつでも芽吹く用意は出来ている様でした。
北天のタルの分岐は南側の眺望が良く椅子の様な形をした岩もあるので、格好の休憩場所でした。
分岐を過ぎると上り坂となり、標高2010m付近に飛龍山の頂への道の入口が現れます。道と言うよりは踏み跡といった方がふさわしい怪しげな道で、下の分岐には「飛龍山」の標識がかかっていたので分かりましたが、山頂からこの道を見つけて降るのは用意ではなさそうです。登る間も踏み跡が二筋三筋に別れていてややこしいです。15分ほどで頂に達します。
飛龍山の名は丹波山村の呼称で、秩父側は大洞山と呼んでいます。戦前の奥秩父の山の文章を読んでいると大洞山としか書かれていませんが、いま登山道を歩くと飛龍山としか書かれていないので、以前は秩父の山でしたが現在は丹波山の山と言えそうです。
山頂は密林で眺望は無し。なだらかな丘の上の様な形をしていて、山頂の標識がなければ何処が頂なのか判別しがたかったです。この日の山歩きの前半のハイライトのつもりだったので拍子が抜けてしまいました。
飛龍山で肩を落としましたが、思いもかけずに禿岩ですばらしい眺望を得ることが出来ました。山と高原の地図には眺望抜群と描かれていますが、わたしが持って歩いていた国土地理院の電子地図には禿岩の文字が無いのです。
本道からそれて1分ほど歩くと岩だらけの稜線の上に出て視界が開けます。
思わず「おっ!」と叫んで岩の端まで走ってしまいました。
雪を頂いた北アルプスの山嶺が左から右へと延々と連なっています。つい癖で槍ヶ岳を探してしまいましたが、冷静に考えたら奥秩父の稜線上から見える北アは常念山脈で、槍ヶ岳は隠れています。
禿岩から将監峠までは稜線の上を歩かずに、中腹に道が設けられています。
大正、昭和初期の奥秩父の山に道らしい道が無かった時代にはおそらく上の岩の稜線を歩いたのだろうと、うらやましさを込めて見上げながら歩きます。もっとも稜線の上の岩場歩きは相当な難路だったろうと思います。
中腹の道から見える樹木は不思議で、樹皮が半分はげていて苔に覆われ枯れている風に見えるのですが、枝の先端を見てみると膨らんだ木の芽があります。このあと小川山まで歩いてみるとこの手の樹木が多く見られて珍しくも無くなるのですが、この辺りでは新鮮な景観に見えたものです。
頂を踏まない山歩きがこれほど退屈とは思いませんでした。眺望もない単調な道を何とか歩けたのは、この山脈が持つ雰囲気の良さのおかげです。
思っていたよりも気温が高く水の消費が多くなりました。この日の予定は雁坂小屋まで歩く予定でしたが、手持ちの水では心許なくなりました。そこで本道からそれましたが将監小屋に向かいました。
本道から将監小屋に降る道はびっくりするくらいの急坂道でつま先が痛くなってしまいました。将監小屋で水を補給し休憩を終えてから将監峠に向かって登ります。こちらの坂も急ですが距離が短いので助かりました。
将監峠はいかにも峠という雰囲気の鞍部です。
特に東側の稜線がぐっと盛り上がっていて、峠の雰囲気を醸し出しています。
ここを過ぎるとほとんど登らずにだだっぴろい樹林帯に出ます。木は密というほどには生えていません。地図で見ると牛王院平と書かれています。峠の名称の将監は上古の官職名ですが武士の名乗りに使われたこともあるので人の名から取られた名称と思われます。牛王院平の意味はちょっと分かりません。牛を「ご」と読ませれば「ごおう」となります。熊野午王符と何か関係があるのでしょうか。それとも「牛頭馬頭(ごずめず)」の牛頭と関係があるのでしょうか。
牛王院平から足場の悪い坂を歩き、少し気合いを入れて登ったら唐松尾山の山頂でした。すこしあっけないくらいにこの日の最高所に到着です。
頂は狭く樹木に覆われていて眺望もありません。数枚の写真を撮っただけで立ち止まることもなくすたすたと先へ進みます。
頂を越えるときつい下り道です。
唐松尾山から笠取山までは巻道が本道の様で、稜線の上の道は踏み跡程度のところがあり道に迷います。唐松お山を下りて分岐に気がつかずに進んでゆくといっこうに登る気配がありません。これはおかしいと鞍部まで引き返してから注意をしてみると踏み跡が稜線の上に向かって延びていたこともありました。
笠取山の頂は東峰と西峰があります。最高地点は東峰ですが木が多くて何も見えません。西峰は禿山で眼下に雁峠を見下ろせます。小さな広場状なので小人数なら休憩するのにうってつけでしょう。
笠取山の頂から見下ろすと崖の様なきつい角度の斜面です。ひょっとしてこの斜面を下るのかと思っていたらその通りで、しかも申し訳程度にジグザグを切るだけで、実際には直降します。最大斜度は目測ですが40度を超えているようです。
笠取山を下ると小高い丘があり、三つの河川の分水嶺と書かれてあります。富士川、荒川、多摩川です。ここに付いたのが16:00。地図上の雁坂峠までの距離から計算すると3時間以上はかかりそうです。5:00に歩き出しているので19:00まで歩くとすれば14時間を越えることになるので、雁坂小屋へ今日中に行くのはあきらめました。
笠取小屋に着くと無人です。前の夜が人の多い雲取山荘のテント場だったのでとても嬉しいです。北海道の山から登山を始めたためか、山の中に人が大勢いると引いてしまいます。
小屋の水場で出会った人が雁坂峠から歩いてきた人で、小屋まで3時間前後かかったと言ってくれたので、この日、笠取小屋のテント場に泊まることにしたことが正解だったと分かりました。