地名 | 到達時刻 | 所要時間 | |
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大石沢登山口 | 07時33分 | ||
角楢小屋 | 08時30分 | 57分 | 57分 |
大玉沢出合(最後の一本丸太吊橋) | 09時15分 | 45分 | 45分 |
北大玉山出合 | 11時57分 | 162分 | 2時間42分 |
平岩山出合 | 13時34分 | 97分 | 1時間37分 |
大朝日岳 | 15時13分 | 99分 | 1時間39分 |
大朝日小屋 | 15時27分 | 14分 | 14分 |
一日の歩行時間 |
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7時間54分 |
日付:2013/08/14 |
小国町を流れる荒川は朝日岳を源流としている。この荒川の最上流沿いに登山道が設けられている。登山口となる林道の行止箇所にはすでに5台ほどの車が止まっていた。数名が登山の準備をしている。話をしたわけでは無いが、ここから入山をした登山者は全員が祝瓶山に登っているらしい。大石沢登山口から大朝日岳に登る登山者は希だと後で知った。
渓流沿いの登山道は、吊橋使って何度も対岸に渡る。この吊橋はなかなか強烈な構造で、一本丸太をワイヤーで縛っただけの簡単なものだ。よほど簡素な吊橋渡りになれている登山者で無いと恐怖感を感じるだろう。ちなみに吊橋に使われている丸太の直径は10cmほどの細いものだ。
小国駅から大石沢登山口まで一緒だった女性は白馬岳にも登っているという人だったが、吊橋を見て引き返してしまった。最も彼女は森林浴が目的だったので、朝日岳に登る必要も無かった。
渓流渡りを除けば沢沿いの道はブナの大木の中の平坦な道を歩く快適な登山道で、これほど見事なブナの大木が多く見られるのは東北ならではだろう。飯豊山の中腹のブナ林も見事だったが朝日岳も負けていない。嬉しいのは下草が余茂っていないので、見通しが効くという点だ。東北地方、特に日本海側のブナの自然林は、下草にチシマザサが茂っていることが多く、笹が茂ると見通しが悪いのでせっかくのブナの林の爽快さも消え失せてしまうことがある。
吊橋は3、4回渡ったと思うが、最後の吊橋を渡ると、いよいよ尾根に取り付く坂道となる。
尾根の登り坂は急で、風は無く蒸し暑く、汗が噴き出してくる。
ところで、吊橋を渡り尾根に取り付く直前に、どういう理由かGARMINのGPSが電波を見失ってしまった。谷底の道には違いないが天候は晴れなので電波の受信状態はそれほど悪いわけでは無い。GARMINのGPSは時々、谷底を歩いていると電波を見失う欠点があるがそれがここで出た様だ。しばらくGPSが電波をサーチするのを待っていたが捉えることが出来そうに無いので尾根道を上って行くことにした。
参考までに書いておくと、これまでにGPSが電波を見失った場所は、南アルプスの大門沢の下り道で土砂降りに降られたときと、北アルプス常念乗越からの下りでこれも雨天だったときの二回だ。
沢筋の道で給水はいつでも出来ると油断をしていたおかげで、尾根に取り付いたときに水の残量に不安が出てきた。やむを得ないので、北大玉山の下にある蛇引清水で給水をする。思っていたよりも長い下り坂で、しかも勾配も急だ。面白かったのは給水場所にテント場が設けられていて、2張り、3張りのテントが設営できる広場となっていたことだ。利用者は少なくないらしい。
水は沢の源頭で、水量は豊富でこれなら秋でも涸れないだろう。冷たくて美味しい水を汲むことが出来た。
尾根道は、北大玉山の直下で祝瓶山からの縦走路と出合う。ここでこの日最初の休憩を取るが、ひどく疲れていることが分かった。昨日、飯豊山を約15時間歩いた疲れが抜けていないらしい。
樹林帯もこの出合までで、ここから大朝日岳の山頂までは見通しの良い尾根の上を歩くことになる。ただし、森林限界は平岩山の手前辺りまで行かないと越えない様だ。
平岩山に近づくにつれ、雲が湧いてきて山頂を隠してしまった。平岩山から見上げた大朝日岳はなかなか立派な山容をしていて、南アルプスの赤石岳を彷彿させる。
平岩山から大朝日岳までは一途の登りとなる。
山頂から南に派生した立派な尾根の上を歩く。期待はしていなかった高山植物が、意外に多いことに気がつく。ハクサンイチゲやミヤマコゴメグサの白い花が目立つ。ヤマハハコもあちこちで群生が見られるが、ホソバヒナウスユキソウはすでに花の季節を終えていた。
それほどの距離も高低差も無いはずの大朝日岳の登りがきつく感じる。山頂が近づくにつれ雲の中に入ってしまい、景観が全く見られないのも疲れが増す原因らしい。
前回の大朝日岳の山頂も雲がかかって眺望は無かったが、今回も同様だ。
山頂を少し下ると大朝日小屋が見えてきた。
大朝日小屋に着いたのは午後4時過ぎ。わたしにとっては早いくらいの到着時刻だったがすでに小屋には一杯の登山者が入っていた。受付を済ませ1500円の宿泊料金を支払うと、二階の一角を使うようにと案内された。
ひどく狭いスペースで、長さ2m、幅80cmほどしか無い。他の登山者が贅沢に2m50cmの長さに1m50cmの幅を使っているのと好対照だ。しかも彼らはザック置き場を壁面の棚に持っている。わたしはトレックライズゼロを使い慣れているから狭いスペースでも苦にしないから良いが、一般の登山者ではどうにも使用が無いほどの狭さだろう。
営業小屋に泊まるのは初めてだが、面白い雰囲気で興味が尽きない。
殆どの登山者は、銀マットもエアマットも持たず、板の間に直に座っている。聞いて見ると重くかさばるので持ってこないという。その代わり、食料、調理器具は潤沢の様だ。数名のグループは大鍋でカレーを煮込んでいる。ほぼ全員がプリムスなどのガスストーブを持ってきていて、調理をしている。小屋の中は、食べ物の臭いとトイレから漏れてくる臭いとで、異様な臭いが立ちこめていた。
18時頃、大朝日岳の山頂が晴れたというので見に行こうというグループに声をかけられた。準備をしてから外を覗くと、再び山頂は雲の中に隠れて閉まったので、断念をする。しかし、そのグループは雲の中を登って行く。
ガスは晴れたりかかったりしていたが、日没の時間だけ晴れてくれた。日が雲の中に沈む景観を見ることが出来た。日本百名山の著者の深田久弥の見たという朝日岳が日本海に作る影朝日も見たいと思ったが、これは早朝の日の出の時にしか見られない。
小屋に入ると、消灯時間の20時に1時間以上もあるが、大半がシュラフに張って寝に着いてしまった。興味深い行動だ。
わたしは、寝るのは19時過ぎと決めているので、朝日連峰の地図を引っ張り出してヘッドライトで照らしながら明日の予定を確認してから寝に着いた。
いびきがうるさくて眠れないことを覚悟していたのだが、以外に静かな夜を過ごすことが出来た。運が良かったらしい。