地名 | 到達時刻 | 所要時間 | |
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西穂山荘 | 05時00分 | ||
西穂独標 | 05時59分 | 59分 | 59分 |
西穂高岳 | 07時02分 | 63分 | 1時間3分 |
天狗のコル分岐 | 09時27分 | 145分 | 2時間25分 |
奥穂高岳 | 12時13分 | 166分 | 2時間46分 |
穂高岳山荘 | 13時00分 | 47分 | 47分 |
北穂高岳 | 15時33分 | 153分 | 2時間33分 |
北穂高岳テント場 | 15時51分 | 18分 | 18分 |
一日の歩行時間 |
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10時間51分 |
日付:2013/09/11 |
西穂山荘の宿泊客の数は多い。
新穂高温泉からロープウェーで手軽に昇れるのが魅力なのだろう。西穂独標、もしくは西穂高岳を往復して帰る登山者が殆どらしい。
午前4時過ぎに起床して準備を始めていると、山荘の方から大勢の人の動く気配がする。9月10日の日の出の時刻は午前5時過ぎなので、4時台は真っ暗闇だ。幾組かのグループが出発をした。
午前5時、準備を終えて山荘の前に出ると、西穂独標を目指す20名ほどのグループがヘッドライトを灯して準備体操をしていた。ツアー登山の一団らしい。日の出前の早い時間に西穂独標へ向かって出発をして、戻ってきてからの空いた時間をどう処理するのだろうと、余計な心配をしてしまう。
ほぼ、全員が初心者と分かるこの集団に先を越されると、追い越すだけで大幅に時間をロスすることが確実なので、早々に発った。
西穂山荘から少し登ると、すぐに森林限界を越えてハイマツ帯に入る。
日の出はまだだが、空はうっすらと明るくなっていて、左手に笠ヶ岳、右手に霞沢岳と六百山が黒いシルエットとなって浮かんでいる。振り返ると、雲海に浮かぶ島の様に乗鞍岳が見える。昨日登った焼岳が白い噴煙を上げている。
東の空は、僅かにオレンジ色に染まっている。
日の出の直前の、山岳景観でも最も美しい時間の一つだろう。
日が昇ると上高地の谷も明るくなり、雲で覆われていることが分かった。周囲の平野部や盆地は雲で覆われていて、雲高は1500mから2000mくらいだろう。北アルプスの山々はほぼ全山が見渡せる様だ。
西穂独標までの登りには、ちょっとした岩場があってクサリが一筋垂れている。このピークは森林限界を越えているので眺望抜群だ。特に見物は、北の方角の西穂高岳から奥穂高岳に連なる岩稜と前穂高岳の釣り尾根だ。
先行して登っていた登山者が数名すでにいた。
西穂独標から西穂高岳の間には岩場は一カ所しかないが、この岩場はちょっと性悪の岩場なので、初心者の通過は難しいだろう。クサリやハシゴは無く、手がかりと足がかりも見つけにくいのだ。
わたしの後を歩いていた4人のグループが、この岩場で悲鳴に近い声を上げていた。
西穂高岳と良い名前をつけたものだと思う。この一座は穂高岳の西端を呼ぶに相応しい。ここから穂高岳の岩の縦走路が始まるからだ。
景観は、西穂独標を上回る。標高が高く、穂高岳の核心部により近いのだから当たり前だろう。ここまで来ると、岩の殿堂と言われる穂高岳の一端に触れた気がする。
もっとも、ここから北に縦走する登山者にとっては、憂鬱感を誘われるのもこの場所だ。前には岩峰が文字通りに林立していて、その岩峰を一つ一つ越えては下らなくては先に進めないのが、はっきりと分かる。
エスケープルートは岳沢に下る道が一つあるだけなので、それを過ぎれば、天候が悪化しようが、体力気力が尽きようが、奥穂高岳まで進まざるを得ない道がこの先の道だ。
西穂から北に向かって進んで行くと、数組のグループに追いついた。
ちょっと信じられなかったのだが、ガイドに引率された初心者のグループらしい。岩場の登り下りがとても遅く、慣れているには見えない。手がかりにする岩が固定されているか浮いているかの配慮はしていない様で落石を起こしているし、足元の浮き石にも注意を払う余裕が無い様でこれも落石を起こしている。
余にも遅いので追い越したいのだが、人数が多いので、グループが休憩を取らないとそれは無理だった。と言って、直後を歩くと落石に巻き込まれる危険があるのでそれも出来ない。
前を進むグループが岩の壁を登り終えるのを待ってから、進む様にした。
こうしたグループは、4組入っていた。
3組はツアー登山の様で、雇われガイドが引率をしている。1組は個人の集まりの様だった。
彼らが天狗ノ頭で休憩を取っていたので、その間にようやく追い越すことが出来た。ゆったりとしたペースに合わせていたので、30分以上をロスしただろう。
天狗ノ頭からジャンダルムの登りとなる。
岩壁の登り切ったところの先端がジャンダルムになっている。ジャンダルムはドーム状の岩の突起で、登って見ると驚くほど小さく印象が薄い。このピークは登って楽しむよりも、馬の背か奥穂のピークから見て楽しむものの様だ。
ジャンダルムから奥穂高岳は僅かの距離しか無いので、すぐに着けそうに錯覚をしてしまう。ここから奥穂までは、ロバの耳と馬の背と呼ばれる性悪の岩場が有り、上り下りをさせられる。
奥穂の頂きに設置された指針板と祠に達すると、本当にホッとする。
今回は山頂は晴れていて、北の槍ヶ岳などは見られた、雲は南から湧いてきているらしく、ジャンダルムから南の山稜は雲に隠されてしまった。
奥穂高岳から涸沢岳までの道が、今日のルートの中ではのんびりと足だけで歩ける区間だ。前回は、ここ歩いてもう岩場は終わったと早合点をしてしまい、北穂までの道が岩場だったのでぎゃふんと言わされた。
白出沢の頭のコルにある穂高岳山荘で水の補充を済ませて先にすすむ。
不思議なのが穂高岳山荘の水の価格だ。西穂も北穂も大天井も、この辺りの山小屋の水の相場は1L200円なのだが、穂高岳山荘だけは1L150円で販売してくれている。
ありがたいことだ。
涸沢岳に登る頃には雲が湧いてきていて、風景を全て隠してしまった。山頂を過ぎるとすぐに岩場の登山道となる。
槍穂縦走路では語感からか、その長さからか、大キレットが著名だが、歩いて見たの難易度は奥穂北穂の方が上の様な気もする。性悪の岩場には全てハシゴかクサリがかけられているので、三点保持の姿勢さえ取れれば誰でも歩ける道なのは大キレットと同様だが、大キレットが上りなら上りだけ、下るときは下るだけの一方なのに比べると、奥穂北穂の道は、登っては下るのでリズム感が取りにくいと思う。
時々雲が途切れてくれるので、北穂高岳の姿を見ることが出来た。
左にある滝谷の壁が印象的だ。
北穂高岳のテント場は奥穂高岳や涸沢から歩いてくると、北穂高小屋の手前に現れる。このため、テント設営の手続きやトイレ、水の補給などのために、小屋まで岩の道を往復しなければならない不便がある。
小屋のロケーションは良く、北穂高岳北峰の山頂直下にある。この小屋からは、北アルプス最高の山岳景観と言われることの多い、大キレット越しの槍ヶ岳が見られる。もっとも、この日は曇り空でなにも見えなかった。