山梨県の東端を南北に連ねる2000m級の山脈です。中里介山の名著“大菩薩峠”のタイトルとなった裏甲州街道がかつてこの連嶺を越えていました。南北に長い山脈なので登山口も幾つもあります。
南からアプローチするのには初狩駅からとなります。初狩駅を降りると「滝子山」と書かれた小さな標識が露地の方角を指しています。国道20を横切り北に歩く道は、しばらくは舗装路です。細流が造った谷間の集落の中を登って行きます。集落を過ぎると道を右に曲がる箇所があります。登山口と書かれています(標高557m付近)。分岐から沢渡の箇所までは未舗装の車道となっています。この分岐の手前100mの所にも分岐があり間違いそうです。
登山口から桧平までは荒れた沢沿いの道です。雨天でも沢はほとんど増水はしていないので、大雨の後でもない限り増水の心配はない沢の様ですが、幾度も渡渉を繰り返します。ペンキのマーキングも点々としていて数は多くありませんので道に迷いそうですが、沢には合流する支流はなく、一筋に上から下へと流れているので道を間違う心配はありません。途中で沢から離れて高巻き道を歩きますが、滝を見下ろしながら歩いているとまた沢沿いの道になります。沢は「最後の水場」(標高895m付近)と書かれた分岐を最後に離れます。
ここから稜線の上に出て稜線歩きとなります。稜線の上の道はだらだらとした登り坂で、稜線の道は広く、廻りには広葉樹林が茂っています。滝子山(標高1615m)の直下は急登坂ですが距離が短いのでそれほど苦しい区間ではありません。滝子山の山頂からは北西、西、南西の方角に眺望が開けています
滝子山のすぐ下に鎮西ヶ池があります。池と言うよりも水たまりといった方が適切なイメージの小さなもので、流れはなく、飲めそうもありません。鎮西ヶ池の先に進むと三叉路の分岐がありますが、標識は「初狩駅へ」と「笹子駅へ」の二つしかなく、大谷ヶ丸から湯ノ沢峠の方角を示す標識がありません。この分岐をよく見ていると踏み跡が北の方角に延びています。その方角を指して標識の柱にマジックで小さく「湯ノ沢峠へ」と書かれています。鞍部に少しだけ降ってから登り直すと、すぐに大谷ヶ丸(標高1643m)の頂に着きます。頂は樹木に覆われた頂で眺望は得られません。十月下旬、紅葉の葉はだいぶ落ちていて、木立を透かして周囲の山がうっすらと見えています。
大谷ヶ丸から米背負峠、ハマイバ丸まで稜線の上を少し登っては少し下る楽な道が続いています。全体的に樹林に覆われた稜線ですが、ところどころススキが生えていて空が見えます。大蔵丸(標高1778m)は岩が多く見られる山頂で、樹木はありません。。大蔵丸を過ぎるといかにも峠という地形が遠望できます。鞍部の湯ノ沢峠はここからは見えません。湯ノ峠避難小屋(標高1652m付近)は峠のトイレ、駐車場の横にあります。水場は山小屋から下に2分ほど降った所にありますが、道が半分笹藪に隠されているので、日没後に暗くなってヘッドライトを頼りの歩くのはきつそうです。
湯ノ丸峠を北上すると黒岳と書かれた小ピークがあります。ここまでは樹林帯ですが、この先からは樹林は少なくなり、笹に覆われた稜線となります。疎らに樹木が生えている程度です。小金沢山(標高2041m)の山頂は少し変わっています。北八ヶ岳の縞枯山や茶臼岳に雰囲気が似ています。枯れ木が多く見られ、枯れ木の中に若木が青い葉を付けて育っています。山頂一帯は樹木をくりぬいた様に開けていて、眺望があります。
小金沢山から石丸峠(標高1933m付近)の間にちょっとした岩場があり、落ち葉が道を覆い隠していて道に迷いやすくなっています。踏み跡が幾筋も造られていて、踏み跡でない水の流れの跡との区別も難しいです。石丸峠から大菩薩峠は樹林に覆われた鬱蒼としたピークを越えるだけで達せられます。
大菩薩峠(標高1897m付近)に出るとそれまで人一人見なかったのが、雑踏と言っていい程の人数があふれかえっています。大菩薩峠は土産物屋も開店していたりして、観光地の様です。大菩薩峠から大菩薩嶺の手前の分岐までは、南斜面に限って樹木が無く、眺望が得られます。大菩薩嶺の山頂は樹木で覆われていて眺望はありません。
大菩薩嶺(標高2057m)から北の丸川峠までは深い樹林帯の道で、勾配はそれほどきつくありません。丸川峠の山小屋はとたん張りの屋根と壁の粗末な建物です。丸川峠から先は土の路の急斜面に石がぼこぼこ植わっていて、段差が時に1mを越す様な箇所があります。特に危険な訳では無いのですが、それなりに体力を消耗します。丸川峠から1時間半程度の短い下りは足腰にこたえます。車道に出る頃にはつま先が痛くなっています。下山口の丸川峠分岐駐車場から大菩薩峠登山口バス停までの所要時間は約20分ほどです。
初狩駅から湯ノ丸峠まで保所要時間は8時間から9時間ほど、湯ノ丸峠から丸川峠分岐駐車場までの所要時間は8時間から9時間程度です。
大月駅から雁ヶ原摺山、湯ノ丸峠、笹子雁ヶ原摺山を通るルートの紹介です。
大月駅(標高217m付近)を降りて舗装県道を金山まで詰めてゆきます。駅から登山口となる山口館までの所要時間は約2時間です。登山口に10台ほど車を止められる駐車場があります。車道は通行止め(標高706m付近)となっていますが、その先もしばらくは荒れた林道を歩きます。廃道となった林道が終わるといよいよ登山道歩きです。
金山から金山峠までの登山道は殆ど利用されていないらしく、下草が道を隠しかけています。沢渡りには丸木橋が架けられているので脚をぬらさぬ事は無いのですが、一カ所だけ橋が無く徒渉できる箇所を探さねばなりません。更に先に進むと、道が5mほど、土砂崩れで無くなっている箇所にでました。迂回路も踏み跡もありません。砂混じりの脆い土質急斜面で、斜面を無理によじ登ることも出来ません。小さな沢が流れていて、その沢に沿って5mほど登り、そこから階段状になった木の根などを足がかり、手がかりにして登ります。10mほど斜面を登ると道があります。
金山峠(標高1079m付近)から下るとすこし林道を歩いてまた登山道に戻ります。林道からの入り口は草に覆われていて、この先の道が果たして歩ける状態か不安になるほどですが、草で覆われているのは陽の当たる200mほどの区間だけで、植栽林の中に入ると日が差さないので草が生えていなくなり歩きやすくなります。2000mに足らない雁ヶ原摺山(標高1874m)ですが、金山からの登り道はわずかの踊り場の様な区間を除くと、登りの一本調子の道で、しかも勾配はなかなかに急です。山頂が近くなるとダケカンバの大木が見られる様になります。雁ヶ原摺山(がんがはらずりやま)の頂は樹林の中にあり、古い時代の500円札のデザインがここから見た富士山をえがいたものなので富士山の方角だけは開いて見えます。山頂にはベンチなどの休憩施設はなく、その役目は大きな数個の岩が果たしていました。
金山から金山峠までの登山道は殆ど利用されていないらしく、下草が道を隠しかけています。沢渡りには丸木橋が架けられているので脚をぬらさぬ事は無いのですが、一カ所だけ橋が無く徒渉できる箇所を探さねばなりません。更に先に進むと、道が5mほど、土砂崩れで無くなっている箇所にでました。迂回路も踏み跡もありません。砂混じりの脆い土質急斜面で、斜面を無理によじ登ることも出来ません。小さな沢が流れていて、その沢に沿って5mほど登り、そこから階段状になった木の根などを足がかり、手がかりにして登ります。10mほど斜面を登ると道があります。金山峠(標高)から下るとすこし林道を歩いてまた登山道に戻ります。林道からの入り口は草に覆われていて、この先の道が果たして歩ける状態か不安になるほどですが、草で覆われているのは陽の当たる200mほどの区間だけで、植栽林の中に入ると日が差さないので草が生えていなくなり歩きやすくなります。2000mに足らない雁ヶ原摺山(標高1874m)ですが、金山からの登り道はわずかの踊り場の様な区間を除くと、登りの一本調子の道で、しかも勾配はなかなかに急です。山頂が近くなるとダケカンバの大木が見られる様になります。雁ヶ原摺山(がんがはらずりやま)の頂は樹林の中にあり、古い時代の500円札のデザインがここから見た富士山をえがいたものなので富士山の方角だけは開いて見えます。山頂にはベンチなどの休憩施設はなく、その役目は大きな数個の岩が果たしていました。
大峠までの道も急坂で、ただ、歩く人が多いためか、飼い慣らされた道という印象です。六月中旬、丁度ミツバツツジの開花の時期に合っていたようです。雁ヶ原摺山から大峠までの道には沢山のミツバツツジの木が自生していて、それが一斉に花を付けています。大峠に下る直前に御硯水と呼ばれる清水の水汲み場があります。飲んでみると、冷たく大変に美味しい水です。大峠(1597m付近)は舗装された林道の峠で、鹿除けのゲートがあります。峠には駐車場とトイレが設置されています。休憩用の東屋は10mほど登ったところにあります。しっかりとした作りの東屋で、床は石畳、壁に沿って三面にベンチが設けられています。
大峠から赤岩ノ丸までが急峻な登り坂、赤岩丸から黒岳(標高1988m)の山頂下までは緩やかな勾配、山頂直下がまた急坂、となっています。雁ヶ原摺山の樹海を上回る様な森林の中の道で、標高が高いために針葉樹が多く見られます。大菩薩連嶺の主稜線の上に達して右に折れて2分ほど歩くと黒岳の頂です。黒岳は樹木に覆われている一突起です。薙ぎの道を下りきるとそこが湯ノ沢峠です。峠の十字路の峠の道を右に降ると、60cmの段差のある土留めの階段を数段下ると避難小屋があります。湯ノ沢峠は車道が通じています。
湯ノ沢峠から縦走路に出ます。大蔵高山、ハマイバ丸(標高1751m)が南下する場合の登るピークで、この二座以外には顕著なピークはなく、なだらかな稜線歩きか下り道です。ハマイバ丸と天下石の中ほどで、樹高3m、幅5m程もある大きなミツバツツジの満開の姿を見ました。このルートには、数カ所、ミツバツツジの群生と呼びたくなる処があります。下り一方の道なのですが、雨が降ふると斜面を泥に変化していて、下りでもそうとうにきつい道に代わっています。20mほどの高低差の下りでは、20度以上の下り坂で、階段もロープもなく、足場となる木の根や手すりとなる草の根もほとんど無く、スキーの横滑りの要領で5mほど滑って下る様な時もあります。よほどに気を付けないと、転倒、そして泥斜面を滑落、と言う事態になるでしょう。下手な岩場よりも滑落の可能性は高そうです。最も滑落しても下は土と草の地面で、崖でもないので、大けがをする心配はとても少ないと言えそうです。曲沢峠は四叉路で、なまえの通り(旧)大和村曲沢に下る道が付いています。ただしこの道は草に半ば埋もれていて、果たして下まで降りられるのか分かりません。標識には荒れた道と書かれてあります。
曲沢峠までは下りが殆どの山稜歩きだったのですが、ここからは一高一低、登っては下る小ピークをいくつも越えて行く道です。坂は上りも下りも急です。お坊山、米沢山を越えると、直ぐに岩のクサリ場が現れます。大した岩場ではないのですが、雨天時には滑りやすいので注意が必要です。岩場を過ぎると今度は土路面の長い斜面の下りです。一本道の下りで、手がかり足がかりが全くありません。ただ、幸いに虎ロープが一本垂れています。最後の登りが笹子雁ヶ原摺山の頂です。頂には三叉路があり、笹子駅の方角に直接降りられる道と、旧道の笹子峠に降りる道が分かれています。木に覆われていて展望は得られそうにないです。
笹子雁ヶ腹摺山の頂から下る道は凄い急坂ですが、登山者が多いのか階段が設けられています。歩幅が人に合わせてある歩きやすい階段です。山でよく見られる人の体を無視した土留めの階段ではありません。直接、笹子峠のトンネルの上を通る本当の古い甲州街道の笹子峠に抜けます。笹子峠からは車道歩きですが、矢立の杉に遊歩道があり、数百メートルだけ車道から離れます。
甲州街道に出ると、恐ろしいほどの交通量で、さしている傘がトラックやダンプが横を通る度にあおられて飛んで行きそうになります。甲州街道に出ると中央線の駅までが歩きの最後です。
大菩薩連嶺の東側にある松姫峠から入山をします。
松姫峠には8台くらい車が止められる駐車場があります。この峠からハイカーが目指すのは鶴寝山と大マテイ山の様です。登山道がこの二つのピークまではよく整備されています。
松姫峠から大マテイ山から牛の背根までは眺望は開けず変化の乏しい道です。勾配はなだらかで、榧ノ尾山(かやのお)を越えて石丸峠の直下の登りにかかるまでは、のんびりと歩けます。石丸峠の下の坂を登ってゆくと大菩薩連嶺に到達します。石丸峠は大菩薩連嶺の縦走路を少し北に歩いたところにあり、大菩薩峠は小ピークを一つ越えた更に北にあります。北に大菩薩峠、大菩薩嶺を目指して登って行きます。
丸川峠分岐駐車場の登山道から入山をして大菩薩嶺を越え石丸峠へ至るルートの紹介です。
十月下旬、丸川峠分岐駐車場には殆ど車が止まっていません。オフシーズンなのでしょう。登山口からしばらくは荒れた林道を歩き、やがて岩が散在する急勾配の岩が散在する斜面を登ります。段差が1mを越える箇所もある歯ごたえのある岩道です。尾根に取り付くと日が差し込んできて明るい道となります。樹林から笹藪に出たところが稜線の鞍部で丸川峠です。峠の分岐に山小屋が建っています。
丸川峠から大菩薩嶺までは深い樹林で勾配の緩やかな道を上ります。道のところどころは石を積み上げて造られおり、手間暇をかけて整備されていることをうかがわせます。大菩薩嶺の頂きは薄暗い樹林の中に、ぽっかりと空いた穴の様なところです。山頂をしめす標柱が立っていなければ、大菩薩連嶺の最高地点とは気づかずに、通り過ぎてしまう様なピークです。樹林に覆われて眺望はありません。
大菩薩峠から石丸峠までは小さなピークを越えます。樹林に覆われたピークで、足元は土路面で、湧水があるのかぬかるんでいるところが多いです。大菩薩峠の道とは印象がだいぶ異なります。石丸峠は無名のピーク同士のあいだにある鞍部です。石丸峠も笹に覆われた峠で見晴らしがききます。石丸峠からの下り道は、カラマツの植栽林の中を通ります。途中で林道を横切ります。下った先が舗装路となります。
丹波山村から大菩薩嶺に至るルートの紹介です。
丹波山村の中心の丹波から丹波川に架かる歩道橋を対岸に渡り、しばらく北に歩くとT字路が現れます。大菩薩峠へと書かれた小さな標識が立てられており見落としやすいです。丹波から登ってくる三筋の道が藤ダワで合流をして大菩薩峠へと通じています。
大菩薩峠は標高が1900mと標高が高いので徒歩で行き交うのには大変な難所ですが、甲州街道よりも歩きやすい道として、かなりの交通量があったらしいです。理由はいくつかありますが、その一つが甲州街道は三つの峠越え、すなわち小仏峠、犬目峠、笹子峠を越えなければならないのに比べて、青梅街道は大菩薩峠一つを超えれば済むと言うことがあったらしいです。旧甲州街道の峠の標高を見てみると、小仏峠が548m、犬目峠は約500m、笹子峠は1000m。三つの峠の標高の累積は2000mを優に超えるので、上り下りに要する体力と時間は大菩薩峠よりも多くなります。
丹波大菩薩道の樹相は、植栽された杉と檜の針葉樹林と、一度皆伐を受けた後に自然に生育したらしいブナやミズナラなどを中心とした広葉樹林が斑の様に散らばっています。広葉樹林は葉が茂っていても日差しが差し込んでくるので明るい雰囲気ですが、植栽林の針葉樹林は木と木の間隔を意図的に小さくしているので日差しが差し込まず薄暗いです。眺望のほとんどない道ですが、十字路、四辻の箇所では意図的に樹木が切り払われている様で、雲取山の方角に眺望が得られます。登り詰めて行くと大菩薩峠へと至ります。
2000m前後の長い稜線を南北に連ねる大菩薩嶺から東の三頭山に向かって派生した牛ノ寝通り尾根の東端の小ピークが鶴寝山です。松姫峠から牛ノ寝通り尾根を登るとすぐに山頂に達します。
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