祖母山は日本百名山の一座です。祖母山から傾山まで縦走路があります。大分県、熊本県、宮崎県の三県にまたがる山域で、冬には山頂に降雪があり、樹氷を見ることも出来ます。すでに絶滅したと言われる九州のツキノワグマが目撃される事でも知られています。大がかりなツキノワグマ探索がなされたこともあります。
祖母山は明治時代の一時期に九州最高峰と言われていた山だそうです。そんな経歴があるにもかかわらず、阿蘇山や霧島山に比べると驚くほど地味な山です。たまたま霧氷の中を歩いたので鮮烈な印象を残しましたが、夏に登るとただ暑い山と記憶されたかも知れません。もし、日本百名山に選ばれなければ、他県から登山に訪れる人は希だったでしょう。
それでも、現地の案内板によると、意外に著名人が登山に訪れています。江戸時代後期の志士の高山彦九郎や明治時代の宣教師のW.ウィンストンです。
神原川の上流の車道の行止が登山口です。神原川から上流に登ったところにある登山口から入山をして、国見峠を経て祖母山に登ります。このルートは、登山口に広い駐車場があり、立派なトイレも立っていますが、登山シーズンを除けばあまり人に歩かれる道では無い様です。
入山してしばらくは、落ち葉に隠れた踏み跡のような道を上ります。途中に幾つか滝があり、この滝を巡るように「渓谷トレッキングコース」が設けられています。渓流や滝と登山道のあいだには樹木があるのですが、晩秋ないし初冬(2009/11/18)と言うことで葉が落ちていて、見通しがききます。
五合目小屋の手前に御社の滝があり、ここまでがトレッキングコースとなっています。道は登山道と言うよりは遊歩道といった方が実際に近いでしょう。天然のアマゴが生息していると書かれています。落葉広葉樹と杉の植栽林が交互に現れるうちに、ブナの木が見られました。寒冷、多雪を好むブナの木の南限は大隅半島ですが、祖母山も南限に近いと言えるでしょう。現地の案内板によると、ブナ林の下にツガ林、その下にモミ林があるそうです。祖母山は意外に寒冷な山なのでしょう。御社の滝から少し登ると五合目小屋です。開いているかどうか確認しませんが、立派な作りの小屋で、入口に長い軒先が伸びています。悪天候の時など、室内に入れなくても、軒先で雨はしのげます。
五合目小屋を過ぎると、杉の植栽林の斜面に設けられた階段を上ります。普通、杉の植栽林は日が差し込まないので薄暗いのですが、この山の杉林は、落葉樹林と斑模様に作られているので、明るいです。杉の林を抜けて沢を渡ると、本格的な登りの山道となります。尾根の上を歩く道で、ここでもブナが見られます。標高が高くなるにつれ、気温が低くなるので、それまで泥の道だったのが、霜柱の道に変わりました。道に変化は乏しく、視界が悪く景観も楽しめません。国見峠が近くなると、昨夜の霧が樹木に凍り付き、樹氷が見られるようになりました。笹は白い色に染まっています。
国見峠から山頂まではわずかの距離で、勾配も緩やかです。途中、九合目と言うのがありました。驚いたのは有人の営業小屋だったことです。100円と有料のトイレがあり、宿泊も出来ると入口に書かれていました。山頂に着くと人でごった返しています。登山道が複数あるので、登って来た道はどうやらもっとも歩く距離の長いルートだったようです。山頂の樹木の枝は霧氷で覆われていて白い空間でした。
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