地名 | 到達時刻 | 所要時間 | |
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三伏峠小屋 | 04時29分 | ||
小河内岳 | 06時45分 | 136分 | 2時間16分 |
高山裏避難小屋 | 09時28分 | 163分 | 2時間43分 |
荒川小屋前岳 | 12時08分 | 160分 | 2時間40分 |
荒川小屋 | 14時09分 | 121分 | 2時間1分 |
一日の歩行時間 |
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9時間40分 |
日付:2012/08/18 |
日の出前に三伏峠小屋を出発して荒川小屋を目指しました。
三伏峠小屋から荒川小屋までの距離なら、それほど早い時間に出る必要は無いのですが、途中で前岳分岐から荒川東岳(悪沢岳)を往復するつもりだったの、余裕を持った時間とするための早立ちでした。
結局、荒川前岳分岐に達した時に雷雨となり、岩稜の登山道を歩くと落雷の危険があるので、荒川東岳には寄らずに、荒川小屋に直行しました。
荒川小屋についてテントを張り終えると、昨日に続いて豪雨となり、間一髪で土砂降りの中を歩かずにすみました。
三伏峠から小河内岳まで登り道で、小河内岳を越えると、荒川前岳にかかるまでは登り道はわずかしかありません。
小河内岳までは崩落地の稜線の上を歩く、多少、スリルを感じる道です。1、2カ所道が崩落していて、しかしまだマーキングはされていなくて、足下を見ないで歩いていれば間違いなく落下してしまうようなところもあります。
稜線の道は一高一下しながら進む道ですが、丈の低いハイマツに覆われているので眺望がすばらしいです。
前後左右の山が全てみられます。朝日に焼けた赤い雲を背景にした富士山が格別美しく見えます。
三伏峠から上河内岳までは2時間ほど歩くのですが、景観が良いので登り道も苦になりませんでした。
小河内岳からの景観も同様です。
北には昨日越えて来た塩見岳が中心に座っています。その背後に間ノ岳の山頂がわずかに見えます。左には白い三角錐の甲斐駒ヶ岳、その左に仙丈ヶ岳が見られます。
山頂の下に雷鳥が一羽見られました。目の上が赤く染まっていたので雄鳥のようです。
上河内岳の下りはなかなか強烈です。下り道で良かったとほっとしました。下りの途中で大学生らしいグループとすれ違います。後で高山裏小屋で聞いたところ、このグループはここに土砂降りの中、やってきたと言うことです。
前日、出発を早くしたおかげで土砂降りの前にテントを張ることが出来たこをと改めて感謝しました。
道を降りきると、樹林帯の中の平坦な区間となります。
途中、板屋岳の崩落地の上を歩くのを除くと変化の乏しい道です。
タカネナデシコやミヤマコウリンカが花を咲かせていますが、花の数が少ないので、それほどの楽しみはありません。
マルバダケブキの黄色い花に囲まれた窪地が高山裏避難小屋でした。
小さな小屋ですが、管理人がいて、泊まりの他に食事なども提供しているのでしょう、カレーライス1000円、中華丼1000円などと書かれたメニューがかかっていました。
この日は、天気予報では雨で大荒れに荒れるという予報だったのですが、高山裏小屋では日が差してきました。良い機会なので濡れているテントを舗装と思ってザックから出したら、管理人が難癖を付けてきたので、止めて早々に立ち去りました。
人柄の悪い人ではなさそうですが、こんなに深い山の小屋の管理人をしているので、多少、偏屈なところがあるようです。
高山裏小屋を過ぎると、荒川前岳の北のカールの壁に掛かります。
壁を途中まで上る道は急勾配です。勾配が無くなってしばらくすると、カールの底にでます。
底からカールの頂点まで、よどみのない坂道が続きます。黒部五郎岳のカール底から壁に掛かる道もすごい坂道ですが、荒川前岳のこの道はそれを上回るかもしれません。
それにしても樹林に覆われたカールというのは珍しいでしょう。
穂高岳や槍ヶ岳、薬師ヶ岳、立山、剣岳などの北アルプスのカールや、北海道の日高の幌尻岳や戸蔦別岳のカールは、石がごろごろした森林限界の上にあるカールで、樹木は全く見られないか見られてもダケカンバの矮樹が点在している程度です。
荒川前岳のカールは、カール壁の大半は樹林に覆われていて濃い緑色です。カール底も面積の半分は樹木に覆われていて、上半分が森林限界に突き抜けています。
荒川前岳のカールを登り切ると、カール壁の上を歩くのですが、カールの向こう側は荒川前岳の大崩落地です。道も数カ所崩落していて無くなっています。黄色にペンキを塗られた歩道を示す石が谷の下の方に引っかかっているのが見えます。
霧が深く見通しが極端に悪いときは危険かもしれません。
荒川前岳から荒川中岳に向かう分岐にたどり着いて、ザックを下ろして休憩のために石に腰掛けると、雨が降ってきました。稜線の上で風も出てきているので、傘を差して歩くわけには行きません。
カッパの上下を身につけ、スパッツを足に巻きおえたころには、雨は本降りとなってきました。
しばらく様子を見てから悪沢岳に向かうものの、中岳避難小屋を過ぎ、悪沢岳のコルにかかる頃には雷が鳴り出してきました。雷鳴は、遠くで聞こえたのですが、以前に「雷鳴が山の上で聞こえれば、遠くになっていても、近くで鳴っていても、距離の差はほとんど無い。いつ頭上で鳴り、落雷するかもしれない。早々に避難した方が良い・」と言う話を聞いたことを思い出して、引き返しました。
ザックをおいた分岐まで引き返して、1時間ほど様子をうかがっていたのですが、話の通り、雷は遠くで鳴ったかと思うと頭上で鳴り、右手に音が聞こえた後は左手に音がします。
荒川前岳の上に雷雲が腰を下ろしてしまった様です。
時間的には十分に悪沢岳を往復できたのですが、断念して荒川小屋に下りました。
荒川前岳から下って行くと、以前に通ったときにはなかった柵が設けられていました。
見ると、ニホンジカの食害から高山植物を守るための柵だそうです。柵の前で、3羽の雛鳥と母雷鳥が盛んに高山植物をついばんでいます。雷の鳴る雨の中を歩き回るので、雷鳥とはうまい名を付けたと感心しますが、雛雷鳥が、柵の中の高山植物を食べたいと思ったのか、盛んに柵を突破しようと試みています。
シカの食害から高山植物を守るのは重要な事だと思いますが、このあおりを食ったのが雷鳥の親子で、これまで自由に食べられた高山植物の一体が囲まれて手が出せなくなってしまいました。ひょっとすると、食べ物不足で餓死をした雷鳥の雛鳥がいるかもしれません。
自然保護の難しさの一例でしょう。
荒川小屋に着く頃には雨がほとんど上がっていました。
テントを張り終えると雨は上がっていたので、時間的にはここから悪沢岳を往復しても日没までに帰れるのだが、と考えたりもしたのですが、雷の音が多くでまだ聞こえていたので断念しました。
これは正解でした。
午後4時前後から、昨日に劣らない激しい雨が降ってきました。
今日は雷付きです。
頭上、前後左右で雷鳴がとどろき、時々、雨は止むものの、夜半まで降っていました。