第2日目 雷鳥沢-剣岳(往復)

このエントリーをはてなブックマークに追加

行程

地名到達時刻所要時間
雷鳥沢04時52分
別山乗越(雷鳥沢経由)06時13分81分1時間21分
くろゆりのコル07時05分52分52分
前剱08時31分86分1時間26分
剱岳10時06分95分1時間35分
前剱11時20分74分1時間14分
剱山荘12時17分57分57分
剱山荘(休憩)12時35分18分18分
別山乗越13時32分57分57分
雷鳥沢14時19分47分47分
一日の歩行時間
9時間27分
日付:2012/09/04

山行記

別山乗越とくろゆりのコルの道

昨年、劔沢に達しながら暴風雨のために登頂を断念した剱岳に登りました。
夜半には月と星がでていたので、当日は晴天と想っていたのですが、日の出前に出発すると、じょじょに明るくなって行く空は、雲が覆い隠していました。

山と高原の地図では、剱岳の山頂まで数時間で達せられる様に書かれているのですが、昨年、別山や劔沢から見た剱岳は容易に人が登れる山に見えなかったので、登りにかかる時間も大きく見て、日の出前に出発をしたのです。

雷鳥坂の急峻な登り道は、幸いにガスがかかっていて全く見えなかったので、歩いていても、先を見て「まだきつい坂道があれほども続くのか」と言う余分な思いを持たずに済みました。別山乗越を見ながら雷鳥沢の坂道を登るのは拷問に近いでしょう。とにかく、急な坂道です。

別山乗越から劔沢には下らずに、尾根の巻き道を通ることにしました。深い意味はなく、劔沢の道は昨年、暴風雨の中ですが歩いていたからです。
この道は、くろゆりのコルまで緩やかな降り道でした。
剱山荘まではこの道を通る人が多いようです。

くろゆりのコルから先はほとんど人の通ることのない道で、這いますが道を覆っています。腰ぐらいの丈のハイマツや背丈ほどもあるハイマツを漕いで進みます。北海道の大雪山を歩いている人なら珍しくも無いハイマツこぎですが、登山道のよく整備されている北アルプスを主に歩いている人には、北アルプスにもこんな道があったのかと驚くかもしれません。
昨日のタンボ平の笹漕ぎ道もすごい道でしたが、ハイマツ漕ぎは藪漕ぎよりも体力を使います。笹よりもハイマツの方が幹や枝が太いからです。

小さなピークを2つ越えると、剱山荘から登ってくる道との出合がありました。
出合から先は、まずまずの歩きやすい道です。
一服剱を越えた辺りで雨が降り出し、やがて土砂降りとなってしまいました。強い西風も吹き始めます。

剱岳

剱岳を表す言葉がいくつかあります。「難攻不落」「北ア随一の難しい山」など登頂の困難を表す言葉が多い様です。

前剱を過ぎると、岩場の登りとなって、手足を使わないと先に進めません。
所々にクサリ場が設けられていますが、全て初心者向けのクサリ場で、ある程度岩場歩きに慣れた人には、かえって邪魔になるものです。わたしは、クサリは必要が感じられない限り使わないのですが、この辺りの岩場でも使わずに登っていたところ、気づかぬうちにクサリが足に絡んでいて、危うく転落するところでした。

一服剱と前剱の間で雨風があまりに強いので、登頂を断念するか、風雨が弱まるのをここでまつか、判断をすることにしました。
幸い、出発時刻が早かったので、時間はたっぷりあります。午前中いっぱい、ここでビバークをしながら天候の様子をうかがうことにすると、30分ほどで雨は小降りになり、風も収まってきました。

早朝に剱山荘から登った人たちが、この辺りで降りてくるのにすれ違いました。
早い人は、雨に降られずに山頂に立てたようです。雨具を着ていない人が大半でした。

難所らしい難所に漸くさしかかると、剱岳名物の登山渋滞を起こしていました。
剣岳に登るのを9月の平日にしたのは、登山渋滞が激しいと聞いていたからですが、まったく体験しないのも物足りない気がしていました。

登山渋滞というものは、びっくりするくらいの初心者が引き起こすもののようです。
岩の下で、なぜ渋滞が発生するのか、先を進む人を一人一人観察していて分かりました。
剱岳はクサリ場が完備しているので、クサリにしがみついて登り下りが出来さえすれば、どんな初心者でも登頂できないことは無いのですが、それでも三点保持の姿勢くらいは出来るレベルでないと登らない方が良いと考えるのはわたしくらいでしょうか。

5分くらいかけて足場と手がかりを探したりするのはざらです。
5mの高さもない岩場で5分、10分を費やしているのですから、渋滞するのは当たり前でしょう。
クサリ場が出てくる辺りから、幸い雨が止んでくれました。
この後雨は、クサリ場を終えるまで降らないで居ました。

どうでも良い様な岩に大仰なクサリが架けられているので、いささかうんざりしていることに、漸く本格的な岩場にかかるクサリ場が現れました。9番と番号が振られています。蟹のタテバイと呼ばれる難所かもしれません。
岩そのものには手がかり足がかりになる様な凹凸が無く、架けられたクサリと、打ち込まれた足場が頼りです。

この9番を登り切って、その上のクサリ場も登ると、頂上からの稜線に達せられるのですが、勘違いをして、下り道の10番(蟹のヨコバイ)を下ってしまいました。10番を下ってから様子のおかしいことに気がついて、「頂上」の方向を示す矢印の方に歩いてゆくと、先ほど登った9番のクサリ場がありました。
さすがにがっかりしましたがやむを得ません。もう一度9番のクサリ場を登りました。

山頂まで、多少歩いて達します。
山頂は岩だらけの狭い場所ですが、10名を越える人があちこちに散らばって休んでいます。
その上、先ほどわたしが追い越した10名ほどのグループが遅れて到着したので、わたしはわずかの休憩を取っただけで下ることにしました。
雨は幸いに上がっていましたが、山頂は吹きさらしだけに冷たい西風が吹いていました。

下山

通常、岩場の登山道は、下りの方が難しいとされています。
剱岳はやや特別で、登りの道と下りの道が分けられている区間が長いので、単純に下りの方が難しいとはいえません。
雨が降っていたので、下りでは滑らない様に細心の注意を払いましたが、歩いた限りでは、登りよりも下りの方が優しい道に思えました。
道のつけかたがうまいのでしょう。

下りの10番の蟹のヨコバイはなかなかの難所ですが、それを除くと、難所と言うほどのクサリ場はありません。大抵はクサリを使わずに下って行けます。無理にクサリに頼って下ると、かえって危険を感じる箇所もあります。

下山にかかる時間は短く、あっという間に前剱に達しました。
この辺りで雨が思い出した様に降ってきます。2時間ほど雨が止んでいて、このまま止むのかと思っていたのですが、そうはうまくいかないようです。
雨の中を休むのも面倒なので、一気に剱山荘まで下って休憩を取りました。

剱山荘の前のベンチで、山のベテランと話す機会があって、剱岳については同じ様な感想を持っているのが面白かったです。
剱岳は転落・滑落の事故の多いところですが、事故のほとんどは初心者が、自分自身が無理をしていることすら気づかずに登ったり下ったりしているときに起こるのです。ある程度の技術を持っている人なら無理かどうかその行為を行う前に気がつくので、決して無理はしません。
また、剱岳はクサリ場が充実しているので、どんな初心者でも登る事の出来る山というのも同じでした。

雷鳥沢のテント場に戻ったのは予定の時刻よりも早い14時過ぎでした。昨日に続いて時間つぶしに室堂まで往復しました。
この日は、初めて室堂に行く道で雲が晴れた日です。高曇りで日は差しませんが、ミクリガ池や地獄谷などが一望できました。過去二回この道を通ったときは濃いガスがかかって何も見えなかったのです。

地図

ページのトップへ